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文:谷田部淳子
アメリカモザイクの旅はまだまだ続く。今度はボストンのある東海岸から西海岸に移動することにした。海のあるCA(カリフォルニア)やFL(フロリダ)では、セラミックモザイクが主流だ。また、プールを自宅にもつ人が多い為か、ガラスモザイクでプール槽や周りを飾った大規模なものや、お皿等を割って楽しむモザイクを簡単に見ることができる。リサイクルガラスを使ったモザイク用のガラスチップを販売している会社もある。西の見所はなんといってもサンフランシスコらしい。今回はLA(ロサンジェルス)よりも少し南に住むMarlo
Bartels氏(マルロ)を訪ねた。彼は、陶芸を勉強しに日本に留学していた作家に釜をつくってもらい、自分でモザイクのピースを焼き、建物全体を飾るようなカラフルで大きな作品を創っている。西海岸に向かう途中、Phenix(フェニックス)空港を経由したのだが、そこでも彼の作品であるセラミックモザイクによるベンチを見ることができた。余談であるが、アメリカには「アートプロジェクト」というものがある。それは公共の建物を建築する際、その予算の数パーセントは美術の分野に使わなくてはいけないというもの。その割合は市や州によって異なる。現在はシアトルが一番条件がよいらしい。先程のフェニックス空港でもこのプロジェクトにより、陶器のオブジェやアリゾナをイメージしたズマルトによるモザイクを含め、幾つもの作品を見ることができる。アメリカのどこを訪ねても感じるのだが、様々な分野・素材の、様々な表現の作品が、個性を主張しあい、一つの場所を演出しているその空間は、統一がとれていないようで、とれているようで、そのミックスした文化もアメリカらしい。いわゆる「パブリックアート」について、ここアメリカでも様々な意見があるようだ。
ホームステイ先で「モザイク、モザイク」と話していたので、ホストマザーがすっかり影響され、撮影してくれたのが、写真の作品。(サンフランシスコ) 西でも銀行や教会で一世代前のズマルトや石のモザイクを見ることが出来、その時代の作家がCAに一人住んでいるらしいのだが、今回は願い叶わず伺うことができなかった。
さて、犬のアニーも待っていることだと、再び東に戻る。今度はいよいよNY(ニューヨーク)とDC(ワシントンDC)を訪ねることにした。
眠らない街、ゲームと競争の街といわれるNY。ここの作家のスタイルは他の州とは異なる。NY以外の地域で「僕はNYの作家ではないから」という声を様々な分野の作家の口から幾度か聞いた。それほど激しく、スピードがある。しかし一方で歴史あるNYは伝統的なアートも好む。NYでは、あらゆる場所でモザイクに出会える。古い建築物はもちろんのこと、地下鉄のホームの壁はほとんどモザイクで飾られている。使われている素材やテーマは駅により異なる。乗換用連絡通路の重なる踊り場の4面の壁をズマルトとタイルで飾っている59th
street駅は面白い。地下鉄内の美術を紹介した冊子があるので、これを頼りに町をめぐるのもよい。
私は『Glass』という雑誌に掲載されたRobert Hickman氏(ロバート)の「NEWYORK MOSAICS」という地図を頼りに氏本人の案内でNY中のモザイクを見て回った。フィルムを勉強した彼は11年間NYでモザイクを教えている。色のないガラスや鏡を四角や六角にカットし、それを組み合わせ何層にも重ねてモザイクを作る。彼の作品はRoosevelt Island駅で見ることができる。彼は「アメリカは他国に比べて歴史がない。その分、伝統や形式にとらわれずに新しい発想が生みだしやすい。新しい美術を生みだすことがアメリカ人作家の宿命である。自分は新しいモザイクを創ることで、また新たなアメリカでのモザイクを発展させたい」と話した。(次号へ続く) |
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