文:谷田部淳子
 さて、美術館でも古代のモザイクにお目にかかることが出来るが前回にひき続きもう少しNYで出会った作家の話をしよう。メールで連絡してくれたのはRobert Kushner氏。日本のコンペにも何度も出品したことがあるという彼は、Matisseが来たことがあるというアトリエに案内してくれた。NYのど真ん中にある、おしゃれなアトリエには日本画に影響された彼の作品が数多く並んでいる。Kushner氏がデザインした作品が入っているというレストランに出かける。吹き抜けの天井の一部と階段の踊り場を飾った豪華な、モザイクは、宝石やズマルトをふんだんにつかい、新しい印象を与える。実際に彼の作品を制作したのは、Stephan Miotto氏。NYの郊外に大きなアトリエを構える彼はとても穏和で、作品搬入の当日というのに快く迎えてくれた。彼は、色々なアーティストがデザインした作品を実際に制作する役割をはたす。彼の他にスタッフが3人程。場合によってはイタリア人のスタッフを現地で起用することもある。NY中のモザイクといわず、アメリカの至る所で彼の制作したモザイクを見ることができるだろう。彼の叔父は初期のアメリカでのモザイクブーム時に大活躍した方で、5歳からその仕事を見て育ったという彼は自然とこの道を選んだ。古い時代のモザイク制作にはこの叔父がほとんど関係しているとのことだ。彼の名前が表だって出てくることはそう多くない。今の仕事について、学生時代シルクスクリーンを学んだ彼は「これは僕の運命なんだ」と楽しそうに微笑んで語った。
 NYの地下鉄の話を前回したが、ちょうど雑誌にその記事がでていた。それは、小さな「目」のモザイクで有名な駅に更に大きな「目」を床面に制作し、その作品が何かのコンペで賞をとったというもの。残念ながら制作中のため見ることはできなかったが、かなり大きな作品らしく、モザイクという技法が、改めて新しく写ったのであろう。
 NYにはお気に入りのモザイクの店がある。それはタイルモザイクで家具を制作しているアトリエだ。そこの作家のCecileはフランス人。とてもシャイな彼女は、本当にモザイクを愛していた。
 NYではこの他にも数多くの作家を訪問できた。展覧会もちょうどあり、全てを紹介したいのだが、それはここではかなわない。ご協力いただいた全ての作家、ギャラリーその他の皆さんに心から感謝したい。
 今度はWashington DCに場所を移そう。
 本当にアメリカは広い!DCはご存知の通り、さまざまな政府機関が集まるのと同時にかの有名なSmisonian(西村さん、スペルあってますっけ?)がある。そして大きな建物建物建物!そのいくつかの中にモザイクを発見できる。楽しかったのはLibrary of Congress.天井から床から壁画から、色々な箇所でモザイクを見ることができるのだが、そこに記された言葉は「Liberty」だったり「Knowledge is power」だったり。英語でリアルにかかれている言葉が楽しかった。
 それからLegan national Airportのメインターミナルには直径18feet の丸い床モザイクを8作品見ることができる。これもコンペでデザインを募集し、技法はモザイクで制作されている。大きな丸いモザイクが一つ一つ違う表情を見せ、それが隣合っているのは本当にアメリカらしい姿だった。
 さて、そろそろ今回のレポートも終わりにしなくてはならない。原稿を書くチャンスをくださったモザイク会議のみなさん、そして取材に協力してくださった全ての方に心から感謝いたします。本当にありがとうございました。